当院の治療方針
虫歯を治す治療から、虫歯になりにくい治療へ
当院が大切にしていることは、健康な歯をそのままの状態で長く維持していくことです。
日本歯科医師会と厚生労働省が1989年(平成元年)から推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動が「8020(ハチマルニイマル)運動」です。20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足できるといわれています。これは「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との願いを込めています。
しかし実際は、80歳で残っている自分の歯の数は、平均7~8本に留まっています。また、歯を失う原因ともなる歯周病は成人の80%、なんと5人のうち4人が罹患している統計があります。
虫歯で戻ってくる患者さまをなくしたい
せっかく虫歯を治したのに、数年経って再び同じところが虫歯になってしまい、当院に戻ってくるケースがありました。
治療後のメンテナンスができていないために、同じ治療をする。しかし、虫歯の治療を重ねると、削られて歯が小さくなってしまいます。こうした経験から、予防治療の大切さを痛感し、本格的に虫歯・歯周病の予防とメンテナンスを始めました。
「プロフェッショナル」の熊谷崇医師に共鳴
2014年10月にNHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」で取り上げられた山形県酒田市の日吉歯科診療所の歯科医師熊谷崇先生は、約25年にわたって口腔二大疾患であるう触(虫歯)と歯周病の発症予防・再発予防・最小侵襲治療を実践してきたことで知られています。
また、熊谷先生はオーラルフィジシャン育成セミナーを運営し、広く人材を育てようとしています。その方針は「検査に基づく治療計画を立てること」「患者さまの口腔内を生涯にわたって疾患の発症と再発を予防すること」です。
当院の院長はこの考えに共鳴し、熊谷先生のセミナーに参加。その経験を治療方針の主軸として据えています。
大切にしているのは検査とメンテナンス
当院では、治療を始める前に必ず唾液検査と歯周病検査を受けていただきます。患者さまが疾病にかかるリスクを診断し、治療に役立てると同時に、患者さまご自身にお口の状態をよく理解していただけます。
診療方針
当院では、“一生涯、自分の歯で過ごす”ためのサポートに、予防を中心にした歯科診療(MTM:メディカルトリートメントモデル)を行っています。
1.お口の状態を把握するための検査を中心に
【問診】
【検査】レントゲン撮影、口腔内写真撮影、唾液検査、虫歯・歯周病の診査
【応急処置】痛みがある場合
2.治療の前に虫歯や歯周病の原因を取り除き再発を防ぐ
【検査結果の説明】検査結果に応じた予防プログラムの提案
【口腔環境の改善】医院での専門的なクリーニング、お口の状態に合わせたホームケアの提案、フッ素塗布
3.必要に応じた治療
歯を削る量を抑えた治療を心がけます。
4.治療終了後、お口の中を最終確認
【検査】レントゲン撮影、口腔内写真撮影、虫歯・歯周病の診査
【初診時との口腔内の比較説明】
【歯のクリーニング・ホームケアの再確認】
5.治療後のお口の健康を維持するために(1~3ヶ月毎)
歯についた全ての汚れを歯ブラシで落とすことはとても難しいです。虫歯の再発・歯周病の進行を予防するために、定期的にメンテナンスを受けましょう。
サリバテスト(唾液検査):検査料3,000円(税込)
サリバテストとは、唾液を採取して虫歯や歯周病にかかるリスクを診断するテストです。検査をするには、まずガムを5分ほど噛んで唾液を集め、試薬を使って唾液の性質を調べます。
サリバテストでわかること
●唾液の量
ガムを噛んで出た唾液の量を計ります。唾液が少ないと虫歯になる可能性が増えます。唾液は、多い方が虫歯の原因となる汚れやニオイのもとの物質を洗い流す働きがあります。
●唾液の緩衝能
唾液の大きな特徴は、酸やアルカリに傾いたお口の中の状態を中性に戻そうとする働きです。食事をしたあと歯みがきをしないでいると、プラーク(虫歯菌の塊)が歯の表面を脱灰し、虫歯になります。唾液の「中性に戻す力」が強いと、脱灰が進まず再石灰化しやすくなると考えられています。
●ミュータンス菌の量
虫歯菌の代表格であるミュータンス菌はプラークの原因となり、酸を産生して歯を溶かす活動を行います。この菌の数が多い場合は虫歯になる可能性が高くなります。
●ラクトバチラス菌の量
ラクトバチラス菌も虫歯菌の1つで、虫歯で空いた穴の中に多くいるのが特徴です。強い酸を作る活動を行うため歯を溶かします。
OHIS(歯周病検査):検査料1,100円(税込)
OHISはアメリカの歯周病専門医のグループが開発した歯周病リスク検査システムです。お口の中の状態を調べて結果をインターネットで送ると、膨大なデータから歯周病のリスクを導き出し、そこから将来の歯周病リスクを予測します。この検査で、歯周病が悪化する前に本格的な予防処置が可能です。
OHISでわかること
現在の歯周病の進行度(5段階)
●何がリスクで歯周病が発症し、進行しているのか
●将来、どれくらい歯周病が進行する可能性があるか
●将来、歯周病を進行させないために必要な措置
これまでは、歯周病の現状を見ることでしかリスクを判断できませんでした。しかしOHISを使えば患者さまそれぞれが持つ原因を見つけ出して、今までわからなかった将来像を予測できるようになります。
この検査の結果を得ることは、患者さまご自身が積極的にメンテナンスに通い、セルフケアに取り組むきっかけになります。
虫歯になったから通院するのではなく、虫歯にならないように通院を
「虫歯になって歯に穴が空いてしまった」「とても痛む」そうならない限り、自分から歯科医院に行こうという気になれないものです。
しかし歯科医院を利用するのは、本当は虫歯になる前、虫歯にならないようにするためです。自分で行う日々のメンテナンスは大切ですが、数ヶ月に一度は歯科衛生士の手による専門的なメンテナンスを受け、的確な予防を心がけていただきたいです。
当院の目標は、健康な歯を1本でも多く残し、生涯自分の歯で食べ、喋る機能を残すことです。